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日本で行われる米軍の艦船修理契約:誰が受注し、どう調達されているか
履行地が日本で 2022-10-01 以降に始まった、艦船の建造・修理(NAICS 336611)の USAspending 元請契約 2,728 件のうち、日本で登録された企業が 2,516 件を受注し、合計 $722.4M の 49% を SUMITOMO HEAVY INDUSTRIES, LTD 1 社が占めています。
最終確認: 2026年11月4日
何が変わり、記録から何が分かるか
日米両政府は、米海軍艦艇の維持整備を日本企業がより多く担う方向で協議を進めています。2026-04-14、両政府は防衛産業協力の枠組みである DICAS(日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議)の第4回会合を開き、名称を DICAS 2.0 に改め、そのための契約の仕組みとサプライチェーンについて協議を続けることで一致しました。防衛省によると、2025年12月には日本企業が舞鶴で米海軍の駆逐艦 USS フィッツジェラルドを修理しており、米本土を母港とする米海軍艦艇を日本企業が修理した初めての例です。
これらは政府間の方針と 1 件の修理実績です。公開調達記録をもとにした日英二か国語のリサーチサービスであるハシケは、米軍がすでに日本で発注している艦船修理の契約記録を保有しています。このページでは、その記録から、仕事の規模、調達の方法、受注している企業、発注している部署を示し、続いて、現在は艦船修理を手がけていない企業が最新の公告のどこに関わりうるかを確認します。
この仕事が日本で行われる理由
米国法典第10編第8680条(10 U.S.C. 8680)は、米国本土、グアム、北マリアナ諸島を母港とする米海軍艦艇について、それ以外の場所の造船所でオーバーホール、修理、整備を行うことを禁じています。主な例外は航海修理、敵対行為による損傷の修理、展開中の艦艇で予定期間が 21 日以内の整備で、例外による作業は各会計年度、その母港の年間平均作業量の 2 パーセントまでに制限されています。この制限は母港で決まるため、日本を母港とする艦艇には及びません。
日本を母港とする艦艇の整備は、米海軍横須賀艦船修理廠・日本地域整備センター(SRF-JRMC)が担っています。SRF-JRMC は、主に横須賀と佐世保で水上艦艇を整備・修理する米海軍の組織です。その作業の契約の大半は、米海軍横須賀艦隊補給センター(NAVSUP FLC Yokosuka)が結んでいます。
仕事の規模と調達の方法
ハシケは、USAspending(米連邦政府の契約記録を公開するデータベース)の元請契約のうち、履行地が日本、業種コードが NAICS 336611(艦船の建造・修理)で、開始日が 2022-10-01 から記録上最新の 2026-08-17 までの契約を 2,728 件数えました。合計は $722.4M です。年度別の表は、10 月に始まる米連邦会計年度でまとめています。FY2026 は年度途中で、記録は 2026-08-17 までですが、すでに $168.0M と、FY2025 の通年の $167.2M に並んでいます。件数は毎年減り、FY2023 の 946 件から FY2025 の 562 件になりましたが、年間の金額は $167.2M から $207.6M の間で推移しています。
仕事のほとんどは、すでに結ばれている契約にもとづいて発注されています。2,728 件のうち 2,493 件、$656.3M は既存の契約や協定にもとづく発注で、その契約の保有者しか受けられません。既存の契約にも留保にもよらない競争は 63 件、$18.7M です。記録から分かるのは競争があったかどうかで、応札できた企業の範囲は各公告の条件によります。ほかに、競争なしが 146 件、$44.1M、米国の中小企業向けの留保が 26 件、$3.2M あります。
艦船の修理・整備:契約件数
2,728
USAspending の元請契約のうち、履行地が日本、開始日が 2022-10-01 以降、艦船の建造・修理(NAICS 336611)に該当するもの(2,728件)
艦船の修理・整備:契約額の合計
$722.4M
USAspending の元請契約のうち、履行地が日本、開始日が 2022-10-01 以降、艦船の建造・修理(NAICS 336611)に該当するもの(2,728件)
艦船の修理・整備:既存契約にもとづく発注の件数
2,493
USAspending の元請契約のうち、履行地が日本、開始日が 2022-10-01 以降、艦船の建造・修理(NAICS 336611)に該当するもの(2,728件)
艦船の修理・整備:既存契約外の競争の件数
63
USAspending の元請契約のうち、履行地が日本、開始日が 2022-10-01 以降、艦船の建造・修理(NAICS 336611)に該当するもの(2,728件)
| 会計年度 | 件数 | 金額(米ドル) | 契約額の中央値(米ドル) |
|---|---|---|---|
| FY2023 | 946 | $179.6M | $29K |
| FY2024 | 727 | $207.6M | $28K |
| FY2025 | 562 | $167.2M | $26K |
| FY2026 | 493 | $168.0M | $32K |
最新の年度は年度途中の数値です。
| 調達の方法 | 件数 | 金額(米ドル) |
|---|---|---|
| 競争あり(既存契約にもとづく発注と留保を除く) | 63 | $18.7M |
| 既存の契約・BPA にもとづく発注(保有者のみ) | 2493 | $656.3M |
| 米国の中小企業向けに留保 | 26 | $3.2M |
| 競争なし | 146 | $44.1M |
母集団:USAspending の元請契約のうち、履行地が日本、開始日が 2022-10-01 以降、艦船の建造・修理(NAICS 336611)に該当するもの。
受注している企業
同じ 2,728 件のうち、日本で登録された企業が 2,516 件を受注しており、1 件以上受注した企業は 101 社です。記録上の名称で SUMITOMO HEAVY INDUSTRIES, LTD は 597 件、$354.0M を受注し、合計金額の 49% を占めます。上位 5 社の合計は 79.9% です。
2 番目に大きい $112.0M(18 件)は、陸軍の契約担当部署を通じて YOKOHAMA ENGINEERING WORKS, LTD. が受注しており、この分野の仕事がすべて米海軍艦艇向けというわけではありません。MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD は 7 件、$53.6M です。規模の小さい日本企業 2 社は件数が多く、SHINKO CO.,LTD. が 622 件、$38.0M、YAMAGUCHI MACHINERY CO.,LTD. が 343 件、$19.5M を受注しています。応札数の記録がある 2,532 件のうち、1,551 件(61.3%)は応札が 1 件でした。
艦船の修理・整備:日本で登録された企業の受注件数(全方式)
2,516
USAspending の元請契約のうち、履行地が日本、開始日が 2022-10-01 以降、艦船の建造・修理(NAICS 336611)に該当するもの(2,728件)
艦船の修理・整備:最大の受注企業の金額シェア
49%
USAspending の元請契約のうち、履行地が日本、開始日が 2022-10-01 以降、艦船の建造・修理(NAICS 336611)に該当するもの(2,728件)
艦船の修理・整備:上位 5 社の金額シェア
79.9%
USAspending の元請契約のうち、履行地が日本、開始日が 2022-10-01 以降、艦船の建造・修理(NAICS 336611)に該当するもの(2,728件)
艦船の修理・整備:応札数の記録がある契約のうち応札 1 件の割合
61.3%
USAspending の元請契約のうち、履行地が日本、開始日が 2022-10-01 以降、艦船の建造・修理(NAICS 336611)に該当するもの(2,728件)
| 受注企業(記録の記載どおり) | 登録国 | 件数 | 金額(米ドル) |
|---|---|---|---|
| SUMITOMO HEAVY INDUSTRIES, LTD | JPN | 597 | $354.0M |
| YOKOHAMA ENGINEERING WORKS, LTD. | JPN | 18 | $112.0M |
| MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD | JPN | 7 | $53.6M |
| SHINKO CO.,LTD. | JPN | 622 | $38.0M |
| YAMAGUCHI MACHINERY CO.,LTD. | JPN | 343 | $19.5M |
| SASEBO HEAVY INDUSTRIES CO., LTD. | JPN | 15 | $15.9M |
| DELPHINUS ENGINEERING, INC. | USA | 2 | $13.7M |
| FINCANTIERI MARINE SYSTEMS NORTH AMERICA, INC. | USA | 27 | $11.8M |
| HOSEI CO., LTD. | JPN | 175 | $11.0M |
| TOYO TRUST TOKKI CO.,LTD. | JPN | 165 | $9.6M |
母集団:USAspending の元請契約のうち、履行地が日本、開始日が 2022-10-01 以降、艦船の建造・修理(NAICS 336611)に該当するもの。すべての調達方法を含みます。
発注している部署
契約の大半は、日本にある米海軍の 2 つの部署が発注しています。記録上の名称で NAVSUP FLT LOG CTR YOKOSUKA が 1,327 件、$460.4M、その佐世保事務所である NAVSUP FLC YOKOSUKA SASEBO OFFICE が 1,178 件、$63.9M です。陸軍の W6QK ACC- DTA は、先の 18 件、$112.0M を発注しています。日本国外の米海軍の部署である NAVSUP FLT LOG CTR PUGET SOUND も、日本で履行される契約を 179 件、$50.3M 発注しています。
| 契約担当部署 | 件数 | 金額(米ドル) |
|---|---|---|
| NAVSUP FLT LOG CTR YOKOSUKA | 1327 | $460.4M |
| W6QK ACC- DTA | 18 | $112.0M |
| NAVSUP FLC YOKOSUKA SASEBO OFFICE | 1178 | $63.9M |
| NAVSUP FLT LOG CTR PUGET SOUND | 179 | $50.3M |
| NSWC PHILADELPHIA DIV | 12 | $21.9M |
| FA5270 18 CONS PK | 3 | $6.3M |
| PUGET SOUND NAVAL SHIPYARD IMF | 4 | $3.4M |
| FA5205 35 CONS PK | 1 | $1.9M |
現在掲載されている公告
SAM.gov(米国政府の公式の調達案件サイト)に現在掲載されている次の 3 件の公告から、この仕事とそのサプライチェーンの様子が分かります。
- 2026-10-18、NAVSUP FLC Yokosuka は SRF-JRMC のために、市場調査の情報提供依頼 N62649-27-RFI-WELD を掲載しました。公告は、海外での修理作業の大きな負担として、溶接手順と溶接技能者の認定に使う米軍規格の鋼材と溶接材料の調達を挙げています。そのうえで、日本産業規格(JIS)または日本海事協会(ClassNK)の認証を受けた母材と溶加材のうち、米海軍の溶接基準 NAVSEA S9074-AQ-GIB-010/248 にもとづいて代替品として評価できるものを求めています。各社の既存の溶接技能者認定、溶接材料管理、検査の仕組みについての説明も求めています。回答期限は 2026-11-20 で、英語または日本語で受け付けます。公告は、この依頼から入札公告は出さないと明記しています。艦船修理を手がけていない鋼材や溶接材料の供給企業も、この公告では供給元の候補として位置づけられています。
- 2026-04-01、NAVSUP FLC Yokosuka は、駆逐艦 USS SHOUP(DDG 86)の修理と整備を確定価格契約で発注する予定であることを示す事前公告 N6264927RA001PS を掲載しました。作業は横須賀海軍基地で艦上で行われ、予定履行期間は 2026-12-07 から 2027-07-20 までです。
- 2026-11-02、NAVSUP FLC Yokosuka のシンガポール拠点は、給油艦 USNS EARL WARREN(T-AO 207)のオーバーホールの募集 N6264927RL005 を掲載しました。作業時期は 2027 年 5 月から 7 月で、履行地はインドを除く米第 7 艦隊の担当海域のどこでもよいとされています。応札期限は 2026-12-02 で、契約は 1 件、受注者は SAM.gov に登録している必要があります。
企業が関わる仕組み
艦船の修理・改装のためのマスター契約(master agreement)は DFARS 217.71 に定められており、米海軍のマスター艦船修理契約(MSRA)はその一つです。マスター契約自体は契約ではなく、後に発注される個々の作業発注(ジョブオーダー)が引き継ぐ標準条件を定めるものです。米国内と米国の海外領土での作業では、この規定により、マスター契約の保有者か、資格を備え受注前に締結することに同意する企業から見積もりを求め、緊急の作業発注は保有者にだけ出されます。応札の条件は公告ごとに定められています。2024年7月には、韓国の HD 現代重工業とハンファオーシャンがそれぞれ米海軍と MSRA を締結しました。どの発注がマスター契約にもとづくものかは、USAspending には記載されていません。
プライム契約者として入札するには、SAM.gov への登録(無料)が必要です。米国外の企業は、その前に国際的な事業者識別コードである NCAGE コードを取得します。日本企業の場合は NATO 支援調達庁(NSPA)が無料で発行します。日本で行われる案件の公告には DFARS 252.225-7042 が含まれることが多く、入札者は履行地となる国で事業を行う許可を得ていることを表明します。
マスター契約を持つ造船所の下請けや供給元として関わる企業もあります。USAspending には元請契約しか載らないため、こうした仕事はここでの数値に含まれていません。溶接の公告のような市場調査は、米海軍がサプライチェーン全体に直接情報を求める場です。
この記録について
件数は NAICS 336611 で登録された元請契約で、陸軍や空軍の契約を含み、別のコードで登録された艦船修理は含みません。下請けの仕事は含まれず、USAspending は国防総省の契約を約 90 日遅れて公開するため、直近の数か月分は不完全です。公告の条件は 2026-11-04 に SAM.gov で読んだもので、募集ごとに異なります。数値は公開されている政府の記録から集計したもので、その記録が完全である範囲でしか完全ではなく、記録の誤りや漏れ、後からの修正はそのまま数値に反映されます。
この記事の用語
- USAspending / FPDS (Federal Procurement Data System)
- 連邦政府の契約データの公開システム。過去の落札者・金額・履行地などを検索できる。ハシケの「類似案件の落札実績」もこのデータに基づく。
- Prime / Subcontractor
- プライムは政府と直接契約する事業者。サブは、プライムから業務の一部を請け負う事業者。政府調達への参入手段としてサブ契約から始める例もある。
- NAICS (North American Industry Classification System)
- 業種を6桁で表す分類コード。各調達案件に主たる NAICS が1つ割り当てられ、中小企業の規模基準もこのコード単位で定められている。
- SAM (System for Award Management)
- 米国連邦政府の一元的な事業者登録システム。連邦調達に応札・受注するには原則として SAM.gov での有効な登録が必要。登録は無料。
- RFI / RFP / RFQ (Request for Information / Proposals / Quotation)
- RFI は情報提供依頼(市場調査)、RFP は提案依頼(交渉方式)、RFQ は見積依頼(簡易な調達で多い)。
- DFARS (Defense Federal Acquisition Regulation Supplement)
- 国防総省(DoD)が FAR に追加・修正する調達規則。国防関連の調達に適用される。
- MSRA / ABR (Master Ship Repair Agreement / Agreement for Boat Repair)
- 米海軍の艦艇・小型艇の修理を行う事業者と海軍が結ぶ基本協定。日本での艦艇維持整備案件では、有効な MSRA/ABR の保有、または受注前の締結合意が条件とされることがある。
- NCAGE Code (NATO Commercial and Government Entity Code)
- 米国外の事業者に付与される識別コード。米国外の企業が SAM 登録を行う前に取得する必要がある。日本を含む NATO 非加盟国では NSPA(NATO支援調達庁)が発行し、取得は無料。
次に読むもの
出典
- USAspending.gov(米連邦政府の元請契約記録)
- 米国法典第10編第8680条(海軍艦艇の国外造船所での修理の制限)
- SAM.gov N62649-27-RFI-WELD:現地調達可能な資材と溶接能力に関する市場調査
- SAM.gov N6264927RA001PS:USS SHOUP(DDG 86)の修理の事前公告
- SAM.gov N6264927RL005:USNS EARL WARREN(T-AO 207)のオーバーホールの募集
- 防衛省「第4回日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS 2.0)」報道発表(2026年4月)
- DFARS 217.71「Master Agreement for Repair and Alteration of Vessels」(艦船修理のマスター契約)
- Korea Times / Maritime Executive による韓国造船所の MSRA 締結報道(2024年7月)
- SAM.gov「Entity Registration」(事業者登録の案内)
- DFARS 252.225-7042「Authorization to Perform」(履行地国での事業許可の表明)
この記事で分からないこと
- すべて公開記録にもとづいています。ハシケは非公開の政府情報にアクセスできず、いかなる政府機関とも提携しておらず、その推奨も受けていません。
- ある条件で記録が見つからないことは、その活動が行われなかった証拠にはなりません。
- 契約締結公告は、各契約担当官が SAM.gov に掲載したものに限られます。すべての契約に公告が出るわけではなく、少額の契約や公告が義務づけられていない契約は含まれません。
- 公告の受注者欄は掲載されたとおりに示しています。所在地は登録上の住所であり、業務が行われる場所とは限りません。
- 国防総省の契約は、USAspending には約90日遅れて反映されます。最近の契約について、応札数などの項目がまだない場合があります。
- 件数は業種コード NAICS 336611(艦船の建造・修理)で登録された元請契約です。米海軍以外(陸軍や空軍)の契約も含まれ、別のコードで登録された艦船修理は含まれません。
- 元請契約だけを数えています。修理造船所の下請けとして行われた作業は含まれません。
- 公告と出典は 2026-11-04 に読んだものです。募集ごとに条件が異なるため、他の募集に同じ条件があるとは限りません。
- 数値は公開されている政府の記録から集計したもので、その記録が完全である範囲でしか完全ではありません。記録の誤りや漏れ、後からの修正はそのまま数値に反映されます。